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2011-09-15

マスコミは、崩れた山の多くが人工林であることを報道すべき


土砂崩れで川がせき止められてできたダム湖=和歌山県田辺市熊野で2011年9月6日午前9時46分、本社ヘリから幾島健太郎撮影

土砂崩れによりふさがれた道路の復旧作業を行う自衛隊員ら=奈良県五條市で2011年9月6日午前8時39分、川平愛撮影

土砂崩れで通行できなくなった熊野古道=和歌山県田辺市内で、県教委提供

熊野古道が土砂にのみ込まれた崩落現場=和歌山県田辺市で2011年9月12日午前10時56分、小松雄介撮影
(以上の写真は、毎日新聞ネットより)

紀伊半島豪雨による山崩れなどの災害は、実態が分かって来るにしたがって、想像を超える大災害となっています。被災された方々、被災した動物達には、痛ましい限りです。奈良県の奥山、和歌山県の奥山、私たちは何度か調査に行っていますが、見渡す限りのスギの放置人工林で埋まっています。(奈良県平均人工林率63%)(和歌山県平均人工林率62%)

早く自然林に戻さないと、下草の生えない放置人工林内では雨のたびに表土が流出しており、大雨の時一気に崩れる。野生動物たちがすめないだけでなく、地元の人たちの命や財産が脅かされている。私たちは長年、地方行政や国に奥山の自然林復元を訴え続けてきましたが、行政も国も動いてくれませんでした。自然林でも、あまりの大雨には崩れることがありますが、人工林の崩れやすさはその比ではありません。マスコミは決して書きませんが、今回の災害は、自然災害ではなく人災なのです。

2年前の兵庫県佐用町の大洪水の時もそうでした。マスコミは、人工林の「じ」の字も書きませんでした。大手マスコミの責任者に電話をして、記者さんたちは現地に行かれるから、佐用町大災害の原因が分かっておられるのではないかと熊森が聞くと、いともあっさりと、「スギの人工林です」といわれました。「わかっておられるのなら、なぜ、書いてあげないのか」と、たずねると、「書けません」という答えでした。「多くの人命が失われたのですよ。2度と繰り返さないように、大災害が起こった原因をきちんと書いてあげてください。でないと、人々は気づかないのです」必死で訴えましたが、無駄でした。研究者、行政、マスコミ、みんなで大災害の原因を自然災害にして終わらせました。

今回も私たちは訴えます。「研究者、行政、マスコミは、大災害を引き起こした本当の原因を、きちんと発表して下さい。死者まで出ているのですよ」命よりも経済が大切という構図は、原発事故問題と全く同じですね。
今度こそ、奥山人工林を自然林に戻そうという声を、全国民であげましょう。

元来、野生鳥獣との共存に科学者など不要

わが国の森には、大きなクマから小さなバクテリアに至るまで、自然界に元々生息していた多種多様な生き物たちが、絶滅せずにたくさん生き残ってきました。この事実は、わたしたちの祖先がこれらの生き物たちに、深いやさしさや畏敬の念を持って接し、棲み分けによってかれらに生息地を保障していた結果です。

自然生態系が守れたのは、科学研究の成果なんかではないのです。この、だれにでもわかる当たり前の簡単なことを、今一度人々にかみしめてもらいたい。

しかるに、ふつう3年ごとに部署が変わっていく行政の人たちは、権威のある大学の先生や、裏でこのような研究者としばしばつながっているかしこい業者たちの、「わたしたちの科学研究と科学的データが行政に必要です。予算を付けてください」という甘い言葉に、すぐ、ひっかかってしまう傾向にあります。自然生態系は複雑すぎて、人間には永久にわからないことでいっぱい。元々数字やグラフで表すことなど不可能な世界なので、いったん研究者や業者に付けた研究費や事業費は、毎年毎年いつはてるともなく要求され続けます。

長年クマ保全に関わってみてわかったことは、こうした①次々と論文を書きたい研究者、②お金を儲けたい業者、③専門知識がないので肩書きのある専門家によっかかるしかないと思い込んでいる行政、④保身のためには権威者たちの顔色を見ながら物書きをするしかないと思っているジャーナリスト精神を失っている記者たち、かれらによって、本来守られるべきクマたちが、ぐちゃぐちゃにもてあそばれているという事実です。

クマたちがしゃべれたら、研究者や業者に、きっとこう叫ぶでしょう。「捕まえないで。解剖研究の対象にしないで。わたしたちに、もう今後一切手を触れないで!体に化学物質を注入するのはやめて!生息地の森を返してほしい。あとはそっとしておいて」子供たちは人間であっても心が澄んでいるから、きっとみんな動物たちの叫びがわかってくれることでしょう。

行政の出している膨大なワイルドマネジメント用の予算を、生息地復元に使えば、クマも、山から出てくる野生動物たちに悩んでいる地元の人々も、みんな幸せになれるのです。

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