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2012-05-30

第3セクターで保護飼育する道をさぐる⑩

22日午後、八幡平クマ牧場がある鹿角(かづの)市役所を訪れました。市長さんにお会いして、もし引き取り手がなかったクマたちが残るようなことがあれば、行政にも入ってもらって、お隣の北秋田市が阿仁熊牧場でやられているように、第3セクターでみんなでクマたちを保護飼育するしか、命を救う道がないとお伝えしようと思ったからです。急なことだったので、市長さんにはお会いできませんでしたが、担当者の方に1時間ばかり会っていただくことができました。

鹿角市では、まだ1回もこの問題で会議を持っていないということで、今の段階では、秋田県庁の動きを見ている感じでした。それというのも、八幡平クマ牧場を開設した昭和62年の時点では、今のような動物の飼育に際してのきちんとした法整備が出来ておらず(「動物愛護法」)、鹿角市は当時の経営者から、クマ牧場開設の連絡は受けたが、「水を汚染しないように注意して下さいよ」などと言っただけで、それ以上の権限がなかったといいます。

平成9年に「動物愛護法」が改正され、クマなどの危険動物は、簡単には飼えなくなりました。施設の立ち入り検査などを受けたあと、県知事からの許可が必要です。というわけで、八幡平クマ牧場はいきなり、秋田県の指導を受けることになりました。牧場の設計が、クマの立場に立ってなされていないなど、当時からいろいろと問題はあったと思われますが、すでにクマたちがたくさん飼われていたので、飼育許可取り消しなどの強力な措置は、とれなかったのだろうと思われます。

秋田県佐竹敬久知事は、今回の事件を受けて、現行法では、クマのような特定動物の施設の管理運営、設置基準、飼育基準、施設の閉鎖要件などが甘過ぎるとして、もっと行政指導が強くできるように、国に法改正を求めていくといわれています。まさにその通りだと思います。施設の中に入るのは、物ではなく、私たちと同じように命も心もある生き物たちなのです。しかも、一度飼われたら、動物たちはその檻から生涯出してもらえないのですから、最大限の動物福祉が保障されなければなりません。ちなみに、佐竹敬久知事は、昔の秋田の御殿様の家の出で、県民によると、とても優しい方なのだそうです。

八幡平クマ牧場を、鹿角市ではなく、秋田県と組んで第3セクターにするという手もあります。県関係者によると、それには県民の同意と、秋田県に利益が予測されることが必要なのだそうです。

クマを守ることは森を守ること、森を守ることは水源を守ること ⑨

このツキノワグマの子どもは、2010年愛知県豊田市で有害捕獲罠にかかった母子グマの子どもです。あのとき、豊田市の職員のみなさんが、この母子グマ の命を何とか助けてやろうと決意し、ここまで必死の思いで連れてきたのです。残念ながら、母グマはここにきてしばらくして死んだ ということで、子グマだけが残っていました。豊田市の若い職員のみなさんの「生きよ」という祈り、強い愛情がいっぱいに詰まったクマたちです。オスは「あいち」で、メスは「とよ こ」という名前です。

コンクリートと鉄格子以外何もないところで毎日外を見ているだけなのは、自分には耐えられないだろうなと 思って、近くに落ちていた小枝を入れてやると、死んだような眼をしていた子グマたちが、突然目を輝かせて、小枝をかじって遊び始めました。近くにたくさん 生えていたフキの葉を入れてやると、一瞬にして喜んで食べてしまいました。

ヒグマにも、フキの葉をやってみましたら、ヒグマたちもみんなうれしそうに食べ ていました。ここも、当協会の太郎と花子のファンクラブのように、お客が持ってきた食料を自由にクマたちに与えられるクマ園にしたら、楽しいだろうなと思いました。万一の事故がないように、職員が立ち会わねばなりませんが。

この牧場の周りの山からは、大量の水が湧き出していました。ちなみに、ここには、野生のツキノワグマたちが棲んでいます。

地元の青年に聞くと、何度も山でクマに会っているそうです。においが強烈で、犬の体臭の10倍ぐらいのにおいがするからすぐわかる。よく、ブワッ、ブワッというなき声が山の中からしてくるが、クマだということでした。私たちが知っているクマは、野生でもにおわないし、なき声などめったに聞いたこともありません。秋田のクマと、兵庫のクマはちがうのだろうかと不思議に思いました。

クマを守ることは森を守ること、森を守ることは水源を守ることです。

住民と生き物の命を大切にする秋田県⑧ 

八幡平クマ牧場飼育員死亡事件のあと、秋田県は5月7日から、①地元住民の安全と、②残されたクマたちの給餌作業や牧場の施錠確認の為に、秋田市の秋田県動物管理センターの職員3~4名を、1日おきに現地に派遣し続けてきました。行政としては、本当にすばらしい対応だと思います。県職員のみなさんは、片道3時間往復6時間使って現場に通い続け、黙々と作業に励んでおられました。東北人のねばり強さを感じました。従業員を全員失ってしまった牧場経営者の方は、県や県職員の方々の応援に大変感謝されていました。

21日秋田入り1日目の夜、私たちは経営者の方と夕食を共にし、じっくりと話し込みました。4年前、破たんした牧場に残されたクマを助けようとして自らも破たんしていった4代目経営者の苦悩が痛いほど伝わってきました。国民の一人として、なんとかこのような善意の人を支えねばならないと思いました。明日は、県生活環境部の職員の方と、県から頼まれた獣医さんが来られるということで、私たちは5月22日、再び牧場をおとずれました。

<みんなでクマを見まわる>

NPO法人の方々や獣医さん、県庁の職員の方が、残されたクマたちが他の牧場に引き取ってもらえるように、1頭1頭ずつの特徴を記録した台帳を作ってくださったそうです。大変な作業をしてくださっているのがわかりました。何とか引き取り手が現れますように。

秋田県の会員が、「秋田ではクマは神様だったのです。今でも、クマを大事に思っている人がたくさんいます」と教えてくれました。県知事さん以下、みんな一生懸命になって、残されたクマの命を助けようとしています。秋田のすばらしい文化にふれた思いがしました。

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